Continuer Inc.

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JOURNAL

Capture of <Alma Allen>

Naoki Ikeda <Stylist>
2020.02.18

私的定番品:自然と引き寄せられたモノ

人それぞれが持っている定番の「モノ」。そこにはモノとの接し方による学びや、気付きがある。そんな人の定番品にまつわるあれこれを、スタッフが話を聞く企画。第一弾はContinuer Inc. 19-20 WINTERのヴィジュアルディレクションを担当していただいたスタイリストの池田尚輝さん。

 

聞き手:Continuer Inc.根本

 

Photo|Arata Suzuki

探求の旅へと連れ出してくれたモノ

 

(根)今回はその方の定番品をピックアップして、何か新たな気付きや創造性などが膨らめば良いなと思い、漠然と考えていた雑談企画第一弾です。池田さんとはヴィジュアル撮影などをきっかけにお話しさせていただく中で、芯の通った池田さんのスタイルをもう少し紐解いていくと「そこに何かありそう」と感じ、お声がけさせていただきました。そして今回ご紹介していただいたのはアメリカの彫刻家、*Alma Allen|アルマ・アレンのスカルプチャーですが、好きになったきっかけは覚えていますか?

 

 

(池)ある雑誌で紹介されている写真を見て、とにかくまず感覚的に触ってみたいと思ったのが最初ですね。その後日本での展覧会のタイミングがあった時にひとつ作品を手に入れる事が出来ました。今回のモノは、僕が現在持っているスカルプチャーの一部です。

 

 

(根)何ともいえない独特な魅力がありますね。ずばり彼の作品に惹かれるポイントはどこでしょう?

 

 

(池)この滑らかな質感と、一方プリミティブで野性味を感じるような、その絶妙な塩梅が魅力だと思います。また、はっきりとした「用途がない」という芸術品ならではのこの存在感も好きですね。そして、「何故良いと感じるか?」「どんな存在なのか?」など、深く物事を捉える「探求」する旅へと連れて行ってくれるきっかけをくれたモノのひとつかもしれません。

 

 

(根)それは興味深い。好きなモノを探求していく事は特に男性は好きですし、そこからまた新しいモノにも出会える感動も良いですよね。今も探求の旅は続いていますか?

 

 

(池)続いていますね。ただ探り始めた当初よりは自分が知りたかった地点に近づけていると思います。アートやデザインの歴史を調べるうち、アメリカで50年代に台頭したモダンクラフトムーヴメントの存在を知りました。Almaの作品はこの頃の雰囲気と近しい所が多いと感じるのですが、自分の好きなアートと、元から好きだった50ー60年代の文学や音楽との世界観の繋がりも再認識する事が出来たのは収穫でしたね。

 

 

(根)池田さんの好みを総括するような存在ということなんですね。

 

 

(池)やや大げさな話ですが、メキシコにある*ルイス・バラガンのあの有名なピンクの家は、家自体を[ヘンリー・ムーア] の彫刻を置くため、この彫刻と一緒に生活するための箱であるという概念でバラガンは作ったそうです。それくらい作品に対する思いが深かったんですね。僕の中ではそれに近い感覚と言ってはおこがましいですが、共感してしまう部分は多々あります。一緒に住んでいる家族にとってこの彫刻はただの「モノ」かも知れませんが(笑)

 

2012年に手に入れたというAlma Allenのウッドボウル。池田さん撮影。

 

(根)生活していく中で、そういった確固たる「モノ」があると言い切れるのは羨ましいです。

 

 

(池)でもそれが「モノ」だというのはすごく怖いですけどね(笑)。もし壊れてしまったら心が痛すぎる。なので「モノ」である以上はそこまで強く思い入れ過ぎないようにはしています。

 

 

(根)そうですよね(笑)。このアレンのスカルプチャーは先ほど池田さんの好みを統括する存在とありましたが、それは池田さんを投影するような「分身」的な感覚とは違いますか?

 

 

(池)どちらかというと自分の「鏡になるようなモノ」ではありますね。

 

 

(根)なるほど。身を引き締めてくれる存在ということでしょうか。ちなみに池田さんは今、どの辺を旅されてるのでしょう?

 

 

(池)Almaを入り口に、時間をかけながら建築や芸術のポストモダン、モダニズムの流れを遡り、宗教戦争、ルネッサンスなど、美術と精神の歴史の前後をいったりきたりするうち、禅の考え方にも触れ、そこから今は少し「和歌」の勉強をしてみたいなという気分です。

 

 

(根)「和歌」とはさすがです。時代を遡って深く掘っていますね。

 

 

(池)ただ、その過程で仏教の教えなどを学ぼうとしている時、あまりにディテールに突っ込み過ぎるのも、当初の目的とズレてしまってるかな?と思う事もありますが(笑)。

 

 

(根)なるほど(笑)でもこのスカルプチャーを目にしながら池田さんの話を聞けば聞くほどに、その他の作品も見たくなります。

 

 

(池)ぜひ見てみてください。Almaから始まった探求も、巡り巡ってここが入り口であり、また最奥でもあるような。Almaの作品は物事のちょっとした「本質」を自分なりに考えるきっかけをくれた僕のマスターピースです。

 

池田 尚輝

 

坂井達志氏に師事後、2000年よりフリーランススタイリストとして独立。 雑誌、ショーなど様々な活動の後、’05年渡米。 ニューヨークにて作品制作の後’06年帰国。現在はさまざまな雑誌はじめ、広告(グラフィック、CM)、カタログ、俳優、ミュージシャンのスタイリングから、ブランドコンサルティングまで ファッションを中心に幅広く活動している。