行方:日本橋に出店されると伺った時、少し意外だった反面、なるほどそうかとどこか腑に落ちる部分もありました。嶋崎さんとしては何か思惑や意図はあったのでしょうか?
嶋崎:実は、いずれはこのあたりのエリアに出店したいとは思っていたんです。Continuer Inc.はこれまで恵比寿と吉祥寺の2店舗で展開していましたが、改めてどこか別の場所にお店を出すことを考えた時、できれば東側のエリア、特に中央区がいいなあとぼんやり考えていたんです。というのも実は、中学2、3年生の頃、よく日本橋に遊びにきていたんですよね。生まれも育ちも吉祥寺ですが、その頃はなんだか日本橋の大人の空気感に惹かれていて。多分背伸びしたかったんでしょう(笑)。丸善でもよく本を眺めてブラブラと過ごしたし、歴史ある建物がそこかしこにある街並みに愛着があります。
行方:もともと馴染みのある街だったんですね。
嶋崎:以前からなんとなく出店場所を探してはいたのですが、なかなかいい物件に出会えなくて…。そんな折、日本橋高島屋S.C.新館への出店のお話をいただいたんです。Continuer Inc.は今まで路面店でしかやってきていなくて商業施設への出店は初めてなのですが、そこにまた魅力を感じました。純粋に面白そうだなと。
行方:新しいエリアと新しい環境。嶋崎さんにとってある種チャレンジングなものだったと思います。出店にあたり何かコンセプトや軸はあったのでしょうか?
嶋崎:文字や言葉で明確に提示するコンセプトは特になく、感覚的にラインを引いているという感じです。強いて、一つキーワードをあげるとしたら「AUTHENTIC」でしょうか。
行方:正統的であるということ。
嶋崎:恵比寿も吉祥寺も提案としてはある種、変化球なんです。少しひねりを加えて、あえて真ん中を外して投げている。それに対して日本橋のお店は直球勝負。真ん中に投げているという感覚です。正統性のあるオーセンティックな提案をしようと。ただそれは、あくまで私たちが考える真ん中なので、別の人からすれば全然真ん中じゃないかもしれませんが(笑)。ちなみにお店のロゴをすべて大文字にしたのもそれが理由です。
行方:今までは「C」だけが大文字でしたね。
嶋崎:恵比寿の店舗と同じ方にお願いしたのですが、これは古代ローマの五賢帝の一人、トラヤヌスのために作られた石碑に刻まれた書体がベースとなっています。一見モダンですが、実はすごく古典的なもの。このお店にふさわしいロゴになったと思います。